【Apple Music / Spotify】”サブスクリプション時代リスナー”としての在り方を考える

cadenceギターのモリです。

サブスクリプションによる音楽配信サービス、所謂サブスク、皆さんは使っていらっしゃるのでしょうか。

WikipediaによるとApple Musicのサービスインが2015年だそうなので、サブスクが一般的に認知されてから既に4年以上も経過しているようです。サブスクって世界的に見れば、もう成熟しきった市場なんですね、きっと。

特に海外はサブスクによる音楽産業の変化は顕著で、街からCDショップが消えていると聞きます。

サブスクの普及が遅れてる日本でも、結構前から著名人がSpotifyでプレイリストを公開していたりします。

パッと思い浮かべたのは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤さん。

我々が学生だった時は、クロスビートやロッキンオンを必死に読んで、インタビュー中に挙げられている音源を追っかけてましたが、こうして著名な方々がサブスクとSNSでお気に入り音源をサクッと公開してくださるのは嬉しい限りです。

なんて良い時代なんだろう。

数年前はダウンロードによる音楽配信のせいで「CDが売れなくなる!!」と色々な意味で話題になっていました。

それに対して、今ではCDの売上で(少なくても一部は)生活を支えられているであろうアーティストが、ストリーミング再生可能なサブスクを利用しているという点でも、その市場の成熟度を感じ取れます。

アーティストにとってもメジャー・インディー分け隔てなく、より平等に多くの消費者へ楽曲を発表するプラットフォームを得ることが出来ました。

昔良くあった、好きなアーティストのCDを友達と貸し借りする時の「次はどんな音源聴けるだろうか」とか「俺しか知らないような音源を貸してやるぞ」という興奮をビックライトで超大規模スケールに膨らませたような面白さがあり、消費者もそれにすっかりハマっている雰囲気が漂っています。

ドラえもんで描かれた未来とは違えど、得られたワクワク感みたいなものは似ているのかもしれません。

 

サブスクの検討を始めた理由

さて、私はiPhoneユーザーなのですが、通信制限や電池切れによるオーディオ視聴以外の機能停止が嫌で、サブスクリプションによる音楽配信サービスを避けておりました。

他にも、私のスマートフォンはイヤホンジャックが搭載されておらず(今はむしろスタンダードですが)、Bluetoothイヤホンを利用する必要がありますが、そのBluetoothイヤホンを忘れずに充電する事が億劫で仕方ない、という凄いミクロな理由もあったりします。

「モバイルWi-Fi契約して、モバイルバッテリー持ち歩けよ」とツッコミを受けるでしょうが、中々腰が重いんです。

何かと理由をつけて在り方を変えたがらないというのは、往々にして誰しもあると思います。例えば、「モバイルWi-Fiとモバイルバッテリー持ち歩くなら、iPod一つ持ち歩けばいいじゃん」とか。

私はいまだにiPod classic再発しないかなとか考えることがありますし、音源聴きたければCDを買おうとしてしまいます。

そんな訳で、私はいつでもすぐに時代に置いていかれるのです。

私のような存在のせいで、業界のイノベーションが見逃されていくんだろうなぁ。申し訳ない。

ただ、結婚して子供も産まれて個人レベルの可処分所得が減り、好きなアーティストの音源を好きなだけ買えなくなった今、新譜に追随出来るほどの経済力があるはずもなく。

恥ずかしながら今更サブスクを利用しようと検討しているのです。

余談ですが、そういう意味でフィジカルって贅沢品ですよね。

家を建てて二階の廊下の壁をCD棚にしてもらったのですが、子どもが大きくなったら「CDこんなに持ってるんだぞ、どうだ、明るくなっただろう」と盤面をピカピカさせながら、成金の如く自慢してやろうと思います。(実際は住宅ローンに起因する多額債務者です。)

さて話は戻りますが、音楽配信のサブスクと聴いてまずパッと思いついたサービスが、上記に挙げたApple MusicとSpotifyでした。

とりあえず、この二つを天秤にかけてより良いと思う方の有料サービスに申し込もうと考えた訳です。

そこで、世界の真理に到達しているGoogle先生に問うたのです。「Apple Music Spotify」と。

そこでヒットした記事は、サブスクリプション時代を生きるリスナーへ難題な選択を迫るような内容でした。

 

AppleのSpotifyに対するステートメント

まず私が見つけたのはAppleによるSpotifyに対するステートメント。2019年3月14日に公開された文章です。

え?企業が企業に対してステートメント?なんだか物凄い違和感。検索結果の中でも一際異彩を放っていました。

そのサイトがこちら。

Apple – Spotifyの主張に対して(https://www.apple.com/jp/newsroom/2019/03/addressing-spotifys-claims/)

私なりに要約するとこんな感じ。

  • Appleは常にクリエイター目線でiTunes StoreApp Storeと言った安心安全なプラットフォームを開発し、Appleと競合するサービスに対しても平等にそれを提供してきた

  • Spotifyは「クリエイター目線」という視点はなく利己的な振る舞いをしていて、クリエイターやAppleから利益を搾取しており、そうして得た利益を独占しようとしている

  • Appleは各産業の拡大の為に、常に市場の拡大によって様々なクリエイターにチャンスを与えるように取り組んでいるが、Spotifyの利己的な振る舞いは音楽業界の後戻りを招く

何だか穏やかじゃないですね……。凄い怒ってるじゃないですか……。

かなり読みにくい文なので、おそらく英文が日本語訳されたものだと思います。

原文がどんな表現かは分かりませんが、他の企業に向かって「搾取しようとしている」というような表現を記載したステートメントを公表するって、結構な一大事ですよね。

一旦批判的な部分は置いておいて、Appleの前向きなビジョンの部分だけピックアップして読むと、私は日清のエピソードを思い出します。

日清食品の創業者、安藤百福はインスタントラーメンの粗悪品が出回った時に、他の企業にインスタントラーメンの製造技術を公開した、なんて話です。確かNHKのプロジェクトXで観たような記憶があります。

普通は「特許で丸儲け」という発想になる所、安藤百福は市場の発展や消費者の安全を優先して、アクションを起こしたという偉大な経営者のエピソードです。

Appleも巨大なプラットフォームを他のクリエイターに利用させている点から、何だか日清の理念に近いものを感じます。

ただ、安藤百福は粗悪品を作ってしまった企業を批判したのでなく、正しい方向へ導いたんだと思います。(美談として語られている可能性もあり、実際は強く批判もしていたかも知れませんが。)

その点に関しては、Appleのステートメントだけ読むとは「正しい在り方だけを伝えている」訳ではなく、明確にSpotifyへの批判が混じっているようで(「Spotifyはクリエイターから搾取してる」という表現を使うあたりが特に)、少しニュアンスが違うような気がします。

AppleからSpotifyに向けられたメッセージの真意はどこにあるんでしょう。

ステートメントのタイトルが「Spotifyの主張に対して」と言うくらいですから、 AppleはSpotifyの発言にレスポンスを返したと思われます。

と言うわけで、Spotify側の主張も調べてみる事にします。

 

Spotifyの告発

やっぱりGoogleさんにお手伝い頂き調べてみると、Spotify創業者のダニエルエク氏のブログ(? ステートメント?)を発見。記事の更新日は2019年3月13日。

Appleは1日であのステートメントを返したのか……。「最速のレスポンス、そうiPhoneならね。」という感じでしょうか。

しかし、サブスクを利用していなかったとはいえ、春に大企業同士がレスバトルみたいな事していたとは……。

ネットは能動的に情報を取得するからこそ、満遍なくニュースを見ているつもりでも、収集できる情報はすごく偏ってますね。

そういう意味では、テレビ・ラジオも捨てたもんではないです。例え他人が何か意図を持って取捨選択をしていたとしても、自分じゃたどり着かない情報へのきっかけにはなりますし。

さて、話が逸れました。Spotifyの主張に関するサイトがこちら。

Spotify – For the Record – Consumers and Innovators Win on a Level Playing Field(https://newsroom.spotify.com/2019-03-13/consumers-and-innovators-win-on-a-level-playing-field/)

Consumers and Innovators Win on a Level Playing Field

どひゃ〜、アメリカ語じゃないですか〜やだ〜。

初めて海外行った時、いきなり言葉の壁に音速でぶち当たって、アメリカ後はそれ以来トラウマなんです。

日本語訳済みのページとか無いんだろうな……。

ただ、こういう公の文章は大抵正しい文法でスラングみたいな表現もない事が多い。だから、Google翻訳が綺麗に訳してくれるはず!

信じて翻訳実行!

すると読み通り、かなり綺麗目な訳が返ってきました。

「読める!読めるぞ!!」と高笑いしながら、失われた民族語でもない、ただの母国語で読んだ内容を私なりに要約したものが以下の通りです。

  • Spotifyは消費者にサービスを通じて全く新しいオーディオ試聴の形を提供してきた
  • AppleApple Musicと競合するSpotifyApp Storeを利用する際に、Appleと競合しないサービスを提供する企業が支払っていない仲介手数料を要求している
  • 他にもAppleはSpotifyに対し、「ユーザーへのメッセージ送付」や「Siriをはじめとする他の機能との連携」、「アプリアップデート」のブロックをしている
  • Appleの対応に直接改善要求を続けてきたが改善されない為、Appleのプラットフォームを利用する他社と公平な扱いを求めて第三者委員会に告発した

上記のサイトの末尾には、更に本主張をまとめたページ(ドメインまで別で取得している様子)があるようです。そちらではSpotifyが問題と捉えている内容が5つ挙げられています。

そちらもGoogle翻訳さんが綺麗に翻訳してくれますので、お暇な方は是非どうぞ。

Time to Play Fair – Fast Facts(https://www.timetoplayfair.com/facts/)

Fast Facts

 

二社の主張の微妙な”ズレ感”

前項までにApple、Spotifyそれぞれの主張を確認しました。

Spotifyの一番の要求は「他社と扱いを同じにして欲しい」という点のように見受けられます。

それが建前かどうかは別ですが、Appleが指摘している様に「Spotifyに対する仲介手数料を無くして欲しい」とは主張していないように見えます。(お互いの主張が公表される前にどの様な表現で意見交換がなされていたかは不明ですが……)

Appleは「競合する相手への差別じゃないよ。アプリ内課金があるアプリケーションは仲介手数料を取ってるよ。広告収入やアプリ外での決済など、Appleが関与しない方法で金銭のやり取りがあるものは仲介手数料は取らないよ。」と回答していますね。

この点に関しては、Appleがあれだけ安全で素早く取引できるプラットホームを提供、維持している訳ですから、仲介手数料の発生理由としてはかなり筋の通った回答だと思います。

ただ、Apple自身に対する仲介手数料の有無や妥当性については語られていません。

Apple自身に対する仲介手数料の在り方についてもステートメントの中で語らないと、Spotifyの主張に対する完全なレスポンスにはなっていない様な気がします。

私は「Appleが自前でこさえたプラットフォームなんだから、仲介手数料を払わずとも維持費が掛かっている」ので、Spotifyの主張ほど「フェアじゃ無い」感じは受けませんが……。

受け答えとしては何となく”ズレ感”があるような。

App Storeを利用する全てのクリエイターがフェアかという点について、二社の考えが物凄い微妙に、本当にほんの少し、ズレている気がしました。

脳トレ系クイズ番組で良くある、「画像の一部が徐々に変化していきます」って問題くらい、微妙に、ちょっとずつ。

後はAppleの「Spotifyはアーティストから搾取している」という発言の真偽が気になります。

この辺はまた別の機会に、Apple MusicとSpotifyの両方に音源を公開している知り合いの方に、報酬の条件について聞いてみたいと思います。

 

現在のAppleとSpotifyの関係は?

さて、今まで見てきたヤリ合いが2019年3月。約半年経った現在のAppleとSpotifyの関係はどうなのでしょう。

ググってみたら、2019年10月に新しいニュースがあったようです。

TechCrunch Japan – SpotifyがApple TVに、iOS 13ではSiriもサポート(https://www.google.co.jp/amp/s/jp.techcrunch.com/2019/10/08/2019-10-07-spotify-gains-siri-support-on-ios-13-arrives-on-apple-tv/amp/)

上記記事、ロイターの英文ニュースを日本語でまとめてくださっているようです。原文はこちら。

REUTERS – Exclusive: Antitrust probers in Congress ask Spotify to detail alleged Apple abuses – sources (https://www.reuters.com/article/us-tech-antitrust-apple-exclusive/exclusive-antitrust-probers-in-congress-ask-spotify-to-detail-alleged-apple-abuses-sources-idUSKBN1WJ1Y3)

Siriに音楽を流すよう指示する時、最後に「on  Spotify」とアプリケーション名を伝えれば、その通りに動くようになったとのこと。

Spotifyの主張の一つであった「Siriをはじめとする他の機能との連携」という点、出来るようになったようです。

iOS 13から対応という事なので、単純にAppleはOSの修正が必要だから、 Spotifyが考えるタイミングで連携機能を実現してあげられなかっただけかもしれませんね。

Siri、全然使わないので気づきませんでした。

私のiPhoneでSiriが起動するのは「平成」と声に出した時くらいなので……。

ただし、Spotifyにとっては主張の一つが一部分実現しただけでしょうし、まだまだこの問題の幕引きは遠いような感じです。

 

AppleとSpotifyの音楽産業に対する功績

話は少し逸れますが、この二社がもたらした音楽産業への功績はとにかくデカい。

Appleは、iPodの時代から音楽業界をデジタルの世界へ導いた点は、本当に凄い功績だと思います。当時は私的利用とはいえ、音楽産業としては著作権違反ギリギリと思われていたと聞きます。

それを見事に乗り越えて(実際にコピーコントロール系のCD媒体を消滅させて)、音楽産業を蘇らせた先見の明は、Appleが世界筆頭企業であり続けている所以とも言えるのではないでしょうか。

Spotifyも、広告収入による無料プランを提供することによって利用者数を増やし、前述の「CD貸し借り」のような隣近所で発生していた音楽中心のコミニュケーションを世界規模に拡大したことは、音楽産業にとって物凄い功績です。

サブスクの手頃さに加えて、あの自己顕示欲と探究心の両方を満たすローカルなコミュニティの面白さを上手く現代の形にフィットさせ、消費者に素晴らしい体験を提供しています。

上記の二社の功績を鑑みると、現在のところはどちらの主張も言いたいことは分かるって感じで、善悪があるものでもなさそうです。

正直良い競争関係って印象。

従って消費者としては、この二社の競争関係が全く新しいアイディアを生み出し、更に音楽産業が発展していく事を期待したいと思います。

音楽産業の時代の寵児、AppleとSpotifyにこれからも注目です。

 

個人的に思うこと

音楽産業としては、前項までに述べた通り「二社仲良くやりながらサービス向上してね」と思います。

しのぎを削ってより良いサービスを提供してもらえたら、消費者としては単純に嬉しいからです。

ただ、オーディオエクスペリエンスなんて言葉がSpotifyの主張にありましたが、最高のオーディオエクスペリエンスは、生の演奏を体験することだと思います。

つまり音楽業界の最高到達点は、コンサートやライブ。

そういった意味では、Appleの主張もSpotifyの主張も「音楽業界のため」ではなく「音楽産業のため」だと感じます。

少なくても、主張の中で「音楽業界の発展」を口実にしているのだから、最高オーディオエクスペリエンス、つまりコンサートやライブといった、音楽を中心としたフィジカルな交流の場をもっと世界に向けて提供して頂きたいです。

Appleは長くApple Music Festivalを開催していましたが、今はもうやっていない。AppleもSpotifyも色々なフェスやライブに協賛していますが、私はジャンル、メジャー・インディー、国内・国外、売れている・売れていないの枠を超えて、まるでデジタルな世界のライブラリから自分で選んだかのように、音楽を一度に体験してみたいのです。

これは、消費者の勝手な欲張りかもしれません。

資本主義社会の株式会社は、お金儲けにならない事はしない。それは当たり前でそれが絶対的に正しい。

だから上記のオーディオエクスペリエンスは、恐らく実現しない話。

それでも私は、音楽業界が面白くなりそうだと思える活動をしている企業のサービスを選ぶ必要があると思います。

この選択がまた難題。

今回取り上げた二社以外にもサービスはあります。

将来どの企業が音楽業界の発展を支えるか、投票する時が来たのでは無いかと思うのです。

消費者として。いち音楽ファンとして。

 

最後に

サブスク、これから具体的に比較検討していこうと思います。

今までで散々カッコつけてたくせに、普通にサービス面の比較もしている訳ですが、曲数に案外と差があるんですよね。

サブスクは「一つ契約すれば十分」といったサービスの性質上、恐らく近いうちに一社独占市場になると思うのですが、そうなると会社の意向でその会社が提供するサブスクに取り扱われなくなるジャンルの音楽も出てくる気がします。

それは情報統制のようで怖くもありつつ、そのサービスに爪弾きにされた音楽こそブルースやパンクのような、反骨精神を帯びた新しいジャンルを築くかもしれません。

それはそれで面白そう。

ともあれ、私は30代も今までと変わらず音楽を聴き続けていそうです。

今回ずいぶん長いブログになってしまいました。貴重なお時間奪ってすいません。

 

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