【レビュー】VOX “VALVENERGY SILK DRIVE” 真空管を搭載したダンブル系プリアンプ・キャビネットシミュレーター

cadenceギターのモリです。

コロナ禍で活躍させてあげられていない保有エフェクターたちをブログで紹介するシリーズ、今回はVOX “VALVENERGY SILK DRIVE”です。

真空管「Nutube」を搭載したモデルで、モードの切り替えによって通常の歪みエフェクターとしての使用方法の他、プリアンプやキャビネットシミュレーターとして使用することができる、万能ペダルです。

VOXが開発したプリアンプ・キャビネットシミュレーター機能付きコンパクトエフェクターということで、信頼度高いですね。

VOXとは?

VOXはイギリスのエレキギター関連の機材を扱うブランドで、アンプやワウペダルで超有名ですね。公式サイトはコチラhttps://voxamps.com/ja/)。

VOXといえばアンプのイメージですが、公式サイトによるとギター本体も製造しているようです。

VOXアンプの渋いデザインはかっこいいですよね。

昔の映画で英国紳士が旅行鞄として使ってそうなビジュアルしてます。VOXのアンプから新聞紙とサンドイッチくらいなら出てきそうです。

サウンドオブミュージックでマリア先生がVOXのアンプ持って原っぱでドレミの歌を歌ってたとしたって違和感ないですね。だとしたらマリア先生の腕力凄すぎですけど。

私が持つVOXアンプのイメージはこんな感じです。

VOXアンプは長い歴史を持ちながら愛用者も多く、公式サイトでは使用アーティストとして、BRIAN MAY(QUEEN)、CHRIS SHIFLETT(FOO FIGHTERS)が取り上げられています。

また、ギター・マガジン 2019年1月号によると、The Beatlesが1966年6月30日から7月2日に行った武道館公演で、John LennonはVOX AC-100,7120,4120をしたそうです。(AC-100は日本のプロモーターが用意した機材、7120,4120はThe Beatlesの機材だったそうです。)

そしてまたまたギター・マガジン 2019年9月号によると、向井 秀徳さん(NUMBER GIRL)はVOX AC-30を使用されているそうです。あの鉄々しい音はテレキャスターとVOXのアンプによって作り出されているんですね。

このようにVOXのアンプは使用アーティストから、トラディショナルな音からモダンな音まで対応でき幅広い音楽にマッチするアンプであることが伺えます。

素晴らしいアンプを世に送り出しているVOXが開発したプリアンプ・キャビネットシミュレーターペダル、VALVENERGY。めちゃくちゃいい音しそうじゃないですか?

さて、余談ですがWikipediaによると、国内販売はKORGの一部門「KID」 が行っているそうです。

後述しますが、KORGが開発を担った真空管「Nutube」を搭載したペダルがVOXから発売されたのは、こういった関係からでしょうか。(ギターやチューブサウンドを押し出した製品となれば、KORGよりVOXから発売された方がきっと心象がよいのかな、と思います。)

 

VALVENERGYシリーズについて

今回紹介するVOXの”SILK DRIVE”はVALVENERGYというシリーズで、ベースモデルになったアンプの違いで4種類のラインナップがあります。

どうやら説明書がVALVENERGYシリーズ共通の様でして、”SILK DRIVE”の説明書に各モデルのサウンドキャラクターに関する説明が記載されていました。各モデルの概要は下記の通りです。

“SILK DRIVE”

Fenderアンプのモディファイブティック系の音、所謂ダンブル系のアンプサウンドがモデルになっているようです。後述の動画内で「gainを低くするとFenderアンプ、gainを上げていくとダンブル系に近づく」旨の紹介がありました。筐体は銀色です。

 
“MYSTIC EDGE”

VOX AC30のサウンドがモデルになっているとのことです。流石にこちらは自社製品ということで、アンプの名前がそのまま紹介文に記載されていますね。筐体は赤色です。

 
“COPPERHEAD DRIVE”

「80年代以降のパワフルなアンプ」と表現されています。色からもMarshallアンプがモデルになっていることが想像できますね。筐体の色は金色です。

 
“CUTTING EDGE”

「壮大なアメリカンハイゲインのチューブアンプの歪み」と記載されていました。後述の動画で「5150」と言われています。おそらくPeavey 5150がモデルになっていると思われます(私はハイゲインアンプに関しては全くわからないので、正直動画の発言だけではPeaveyかEVHかよく分かりません。ほぼ一緒?)。筐体の色は濃いグレーです。

真空管の搭載によりモデルになったアンプに肉薄する音色を作り出している訳ですね。

VALVENERGYシリーズはこうしたリアルアンプサウンド以外にも沢山の特徴があります。

VALVENERGYシリーズには各ペダルをリンクさせる機能があり、筐体上部のLINK端子をミニフォンケーブル(普通のイヤホンジャックにさせるサイズのやつ)で接続すれば、片方をオンにした時にリンク接続されているもう片方をバイパスにすることができます。これによって、各ペダルのサウンドキャラクターをアンプのチャンネル切替の如く操作できる、という機能です。

これは結構素晴らしいのではなかろうか。ついもう一台欲しくなりますね。

マルチのように一台で何種類もシミュレーターが搭載されている訳ではありませんが、マルチのデジタル音が何となく好きになれない方にはもってこいのペダルではないかと思います。(私の耳では区別つきませんが。)

また公式サイトによると、当シリーズは9Vの電源電圧を15Vに昇圧してアナログ回路を駆動させているそうです。これによって高いヘッドルームを確保することができるようになっています。

内部で電圧を昇圧してくれているので、他のエフェクターでよく使われている通常の9V電源で駆動できるのも嬉しいです。他の電圧のアダプターを買うのに、また3,000円近くかかってしまいますからね。

更に、VALVENERGYシリーズにはオシロスコープ機能が搭載されています!VALVENERGYシリーズが目を惹く一番の理由になっていますね。

なんとOLEDディスプレイに波形が表示されます。かっこいいです。バイパスの状態でも波形が出てくれますので、ずっと弾いていたくなります。ディスプレイをOFFにすることもできるのですが、OFFにする理由がないです。

これぞ男のロマンですね。このペダルの開発会議で「波形見えるようにしましょう!」と発案した方、ポケモンノーベル賞もの(すなわち、夏休みを発明した方と同等の偉業を成し遂げている)です。

VALVENERGYシリーズのシリーズの紹介はYoutubeで探すと沢山出てきます。発売元がVOXなだけあって、Youtubeでオフィシャルな動画が多くアップロードされていますね。

一番わかりやすいのは、プロギタリストでギター機材の大インフルエンサー、山口和也さんの動画でしょうか。製品開発の方もご出演されており、推しポイントが紹介されています。引き比べもあって、各モデルの音色の違いが分かりやすいです。

人間椅子の和嶋慎治さんが出演されている動画もありましたので、そちらもご紹介致します。

和嶋さんは自分で制作するくらいエフェクターがお好きだそうで、色々なメディアにご出演されています。

失礼かもしれませんが、その時の和嶋さん、少年のように楽しそうなんですよね。

いつまでも少年の心を忘れない素敵なギタリストだと思います。

“SILK DRIVE”のサウンド

前情報が長かったですが、ここからは具体的に”SILK DRIVE”について確認してみたいと思います。

ノブはVOLUME、GAIN、BASS、MIDDLE、TREBLEの5つに加えて、BRIGHTスイッチまでついています。

この大きさでディスプレイも搭載されて5ノブ+1スイッチは凄いです。アンプと同じような操作感で音作りができます。

さらに筐体上部のスイッチで、下記3つのモードを切り替えることができます。

STANDARD:通常のエフェクターとして使用するモード。
PREAMP:リターン刺ししてプリアンプとして使用するモード。
CAB-SIM:ラインに直接さしてキャビネットシミュレーターとして使用するモード。

これらのモードをシーンに合わせて利用することができます。

本当は”SILK DRIVE”のPREAMPモードをJCにリターン刺しして試したいところですが、このご時世なかなかスタジオにも行けません。(仮に自分が子どもに移してしまって保育園が休園になった時、他のご家庭に凄い迷惑かけちゃいますからね・・・)

そこで、宅録環境で”SILK DRIVE”のキャビネットシミュレーターモードを使ってライン録りしてみました。

DAW側でEQを弄ったりコンプやリバーブをかけたりせずに、”SILK DRIVE”のみで弾いてみます。

すると、モコモコだったはずの音が”SILK DRIVE”のお陰で綺麗なクリーンサウンドになりました。

gainの設定にもよるかと思いますが、gain12時設定だとどクリーンというより、ピッキングの強弱に応じて自然な歪み成分が含まれています。アンプらしい自然なgain感です。

音質はFender系のアンプらしく暖かすぎずないスッキリとした輪郭の音になりました。前述の通り、電圧が15Vに昇圧されているおかげか、かなり懐に余裕のある音に聴こえます。

また、BRIGHTスイッチを上に倒すと、明るくパキっとした音色になります。

BRIGHTスイッチってモノによってはハイが暴れすぎて使いにくいことがありますが、”SILK DRIVE”のBRIGHTスイッチはハイが痛くならないので個人的にはBRIGHTオンの方が好きでした。

そして、ロングトーンの時に「びぃ~ん」というキャビの箱鳴り感がありますね!CAB-SIMモードのおかげでしょうか。そこが一番アンプっぽい鳴り方している気がします。

ちゃんと突き詰めてEQを調整すれば、めちゃくちゃいい音になるんじゃないだろうか。

意外なのが、gainを上げていくとかなり歪む点です。Fender系と聞いてgainは大人しめかな、と思っていましたが結構ジャキジャキしたところまで歪みます。

単体の歪みペダルとしても役割を持たせるためにgainの可変幅を広くしたのでしょうかね。

また、”SILK DRIVE”の前段にオーバードライブペダルを置いてみましたが、歪みの乗りも良いと感じました。

“SILK DRIVE”の前段にピッキングニュアンスが出やすいオーバードライブを使用しましたが、”SILK DRIVE”がその特性を消してしまうことはなく、ちゃんとピッキングの強さに合わせて歪みの量が変わっています。

個人的にはいつも使っているアンプシミュレーターの方が音作りしやすいと感じましたが、かなり近い音色まで持って行けたと思っています。CAB-SIMモードはもう少し研究が必要そうです。

自分が使っているPCのスペックがイマイチで、アンプシミュレーターと他のプラグインの同時使用時にレイテンシーを上げないと録音できないこともあるので、メンバーに聞いてもらうデモ録るくらいなら”SILK DRIVE”使おうかなと思います。

良く弾けたテイクをソフト側の都合で逃す精神汚染はキツいですからね……。

気になる点

“SILK DRIVE”の凄くどうでもいいけど気になる点を一つ挙げておきます。

VALVENERGYシリーズ電池稼働ができますが、消費電流が大きいため、説明書に電池寿命が連続使用で2時間と記載されています。ACアダプターでの利用を推奨する旨も記載されています。

なので、実質的には電池稼働は選択肢にない訳ですが、筐体内の電池を格納する空間に割と余裕があり、持ち上げると電池が動いてカラカラ音がします。

どうしても電源が取れない場所でも動かせる利便性やアダプタトラブル対策として有用ですが、個人的には電池稼働機能を削って小型化されても、ボートの空き空間が増えて嬉しいなと思います。

 

Nutubeとは?

一応「Nutube」にも触れておこうと思います。

VOXのVALVENERGYシリーズは、次世代真空管「Nutube」を搭載したペダルです。

数年前からNutubeってよく聞くようになりましたよね。

私が初めてNutubeを耳にしたのはIbanezの”NTS NU TUBESCREAMER”で、丁度cadenceが渋谷で定期的にスタジオに入りだしたころに発売されたと記憶しています。(そんな前から活動しているのね。亀の歩み寄り遅い。)

Nutubeは「何か凄いらしい」ことはよく伝わってくるのですが良く知らないので、VALVENERGYシリーズの詳細を確認する前にNutubeについて調べてみたいと思います。

さて、ググってみましたら、Nutubeに特化したサイトも公開されていることがわかりました。(https://korgnutube.com/jp/

NutubeはKORGとノリタケ伊勢電子株式会社の共同開発によって誕生した新しい真空管とのことです。

このサイトを引用すると、Nutubeという真空管には下記4つの特徴があることが分かります。

  • 大幅な省電力化
  • 小型
  • リアル真空管サウンド
  • 高信頼度、長寿命

Nutubeが上記の特徴を実現したことによって、真空管をペダルサイズの筐体に簡単に搭載できるようになったのです。

ひと昔前だと、筐体から真空管が飛び出たペダルが話題になったりしましたけど、故障を考えると正直持ち運びもライブ使用も怖いですよね。

そんなリスクも無く真空管のサウンドが得られる、ということなのだそうです。従来から真空管風サウンドが出せる(サチュレーションが真空管っぽい)ペダルはありましたが、Nutubeは真空管なので「本物のチューブサウンド」と表現して間違いないようです。

しかも小形で省電力で長寿命。良いこと尽くしですね。

この特徴がペダルへ搭載することの親和性が高く、近年Nutubeを搭載したエフェクターが発売されているようです。

いずれは「真空管飛んでアンプの音出なくなった!」みたいな事が無くなっていくのだろうか……。

かがくのちからってすげー。

余談ですが、上記企業サイトの一ページではなくドメインまで取得して紹介されていることからも、力の入れようが伝わってきます。

他のメーカーも絶対利用したいでしょうし、この研究開発費をあっという間に償却できるほどのビジネス規模でしょうね……。

まとめると、Nutubeは省スペース・省エネ・長寿命を実現した本物の真空管、ということですね。

今まで本物の真空管を搭載したペダルはブティック系のお高いイメージがありましたが、「ちょっと贅沢だけどお小遣いで買っちゃおうかな」と思える価格帯で提供してくださるVOXの企業努力には感謝しかありませんね。

最後に

という訳で、JC対策用に購入した”VALVENERGY SILK DRIVE”でした。いかがでしたでしょう。

実際にJCリターン刺しで試せていなくて申し訳ないですが、必ず実際に試して本記事更新しておこうと思います。(それとJC対策についても記載しようと思っていましたが、長くなりすぎるのでまたの機会にします。)

ここで一つ私の昔話を。

大学時代の軽音部でも大体リードギターが弾ける人にMarshallを使ってもらっていたので、私はJCを使っていましたが、音作りは当時からマジでちんぷんかんぷんでした。

大学一年生で初めてスタジオライブに出させてもらった時にJC使って、先輩から優しく「音作り頑張ったらもっと良くなるよ」とアドバイスを頂いたことがあります。

15年近く前の話になりますが、思えばそれが音作り苦手意識が始まった気がします。ただそれは、同時に私に音作りの楽しみに気付かせてくれた言葉でもあります。この言葉がなければ、こうして音作りにハマって楽しんでいなかったかもしれません。K先輩には大変感謝しております。

そして未だに音作り沼を暗中模索してますが、その暗闇に一筋の光を与えてくれた”VALVENERGY SILK DRIVE”。救いのペダルになるか、とても楽しみです。

(関連記事)

【レビュー】Walrus Audio “Voyager” ケンタウルス系とも表現されメインもブースターもこなす万能歪みペダル

【レビュー】Walrus Audio “Warhorn” 原音を太く明瞭に発音する優秀なトランスペアレント系ペダル

【レビュー】JHS Pedals “Angry Charlie V3” BOSSともコラボしたマーシャルライクなディストーション